「プライド」著者金子達仁を読んだ感想

1997年10月11日のヒクソングレイシーvs高田延彦に関する、金子達仁著作「プライド」を読み終えた。

高田延彦や榊原信之ら関係者の当時の心境が非常にテンポよく分かりやすく記述されているが、僕が印象に残ったのはヒクソンの言葉。

まずヒクソンは「侍」や「武士道」が好きらしく、それらの言葉をやたら連呼するが読んでいる僕としては失礼ながら「うっとうしいなぁ」と思ってしまった。最近の日本人は侍の精神がなくなったと嘆いているが、「大きなお世話だよ」&「侍がいた時代でもほとんどの日本人は農民だったんじゃないの」ですよ。あんまり興味がないからあえて調べることもしないけど。

ただ兄ホリオンとの確執は気の毒だな、とヒクソンに感情移入した。

お金を不当に摂取され兄と決別、その兄の工作によって父親や他の兄弟と引き離されたうえでのバーリ・トゥード・ジャパンの出場。ヒクソンが日本で試合する時にエリオやホイスがいなかった理由を恥ずかしながら初めて知った。

道場破りを決行した安生洋二から見たヒクソンの印象も興味深かった。安生曰く、初めて組み合った時のインパクトはなくテイクダウンされてのパウンドもあまり効かず最後のチョークスリーパーも何とか対処できそな気がしたという。それでも安生はなす術もなく失神させられた。

格闘技未経験の僕からみればヒクソンは「強い」ではなく「上手い」格闘家だと思う。

生い立ちはめちゃくちゃだ。実はヒクソンの産みの親は一家に働きに来ていたアフリカ系の若いハウスキーパーでホイラーやホイスとは異母兄弟とのこと。しかも弟ホイラーらは妾の子らしい。

そういわれてみると、父エリオやホイラー、ホイスは体格がスラっとしているがアフリカ系の血が入っているヒクソンは体格がガッチリしている。一族最強の由来はアフリカ系の血筋という要素も関係しているのかも知れない。

そしてあとがきに書かれていたヒクソンの驚愕の離婚話。まぁ彼からの一方的な話では全体的な真相は見えてこない。キム元夫人の証言も入れてほしかった、格闘技には関係ない下世話話だけど。

本を読んでて思わず胸が締め付けられたのが「森下直人」の名前が出てきた時だ。森下氏の尽力で試合はパーフェクTVで放送されることになったらしい。重要な立役者の一人だが残念なことに2003年1月に自ら命を絶ってしまった。出来れば当時彼がどういる思いでこの一戦を実現しようとしていたか知りたかった。

300ページある本だがダレることなく一気に読むことができた。これは著者の金子達仁さんの文章力と構成力によるものだと思う。僕も見習いたい。

実際に試合が行われたのは20年前だがそれでも興味を惹かれるこの一戦にまつわる当時の関係者の数々の証言、物語、歴史。知ることができてよかった、嬉しかった、おもしろかった。