スズイチのブログ

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「年金問題」は嘘ばかり 髙橋洋一 と同い年の年金滞納者

先日、ぶらりと立ち寄った本屋で何気なく本棚を眺めていたら、髙橋洋一さん著書の『「年金問題」は嘘ばかり』が目に留まった。

そのタイトルを見て、僕は思わず4年ほど前に知り合った同い年のオオキ君という男を思い出した。

当時の僕は32歳の施設警備員で、市営の駐輪場を担当していた。そこで同じ警備員で同い年のオオキ君と知り合った。

オオキ君は高校卒業後に自衛隊に入隊して4、5年の間に1000万ほど預金したらしい。その後除隊して東京で賃貸アパートを借りて働かず預金を散財して遊び呆けた。結果数年で金を使い果たして地元へ舞い戻り職を転々として、施設警備員の仕事に流れ着いた。

そのオオキ君と何気なく雑談している時に、ふと年金の話になった。オオキ君は自衛隊除隊後は一度も年金の保険料を払っていない、と言うのだ。

当時の僕やオオキ君が所属していた警備会社は、現場の警備員は基本的に「契約社員」扱いだったが、健康保険や厚生年金等の社会保険には加入することが出来た。

しかしそれは「申告制」だった。

面倒なことに社員の方から会社の幹部連中にわざわざ申し付けて、晴れて社会保険に加入できる状態だった。普通は社員が何も言わなくても事務職等が自然に加入手続きをしてくれるものではないだろうか。僕は当初、その警備会社では社会保険に入ることが出来ないと思ってしまい、国民年金の保険料を自分で支払っていたが、現場勤務の同僚の人から教えてもらって慌てて会社に申告して社会保険に加入した。教えてもらってなかったら、その会社にいる限り僕はずっと国民年金に加入していたのではないだろうか。不親切な気の利かない会社だなと思った。

で、オオキ君が年金を納めていないというので僕が社会保険加入を勧めてみたら拒否されてしまった。理由を聞いてみると「スズイチさん(僕のこと)、年金はも・ら・え・な・い」と断言されてしまった。

彼の言う「年金はもらえない」というのは具体的にどういう状況を差すのだろうか。年金の支給がストップすることなのか、または支給額が減額されてどんなに長生きしても元を取れないということなのか。

しかし、大金持ちならいざ知らずただの雇われサラリーマンにとっては老後の年金支給は死活問題。「年金はどうせもらえないから払っていない」それでは、老後の生活はどうするつもりなのか。死ぬまで働くのか、生活保護を貰うのか、とても危険で無鉄砲な考えではないだろうか。

警備していた市営の駐輪場には隊員は全部で8名いたが、オオキ君以外はみんな年金を納めていた。厚生年金だから給料から天引きされていた。自分以外のみんなが年金を納めていることにオオキ君は物凄くビックリしていた。

何故オオキ君が驚いていたかというと、推測するに彼はニュースか何かで「今、年金の未納率が4割」ということを断片的に聞いたからであろう。そしてその情報をよく咀嚼しないまま頭にインプットしてしまったのであろう。だから彼は自分以外のみんなが年金を納めていることに驚いた。あれ、未納率4割のはずなのに確率的に合わないな、という疑問にぶち当たってしまったのだ。

しかし僕はあまりオオキ君に対して強く年金加入を勧めなかった。彼と面識がない人は少々奇妙に思うかもしれない。しかし彼は少し異常なほど神経質で短気な性格なのだ。そして思い込みが強く無駄にプライドが高い。下手に忠告しても、理不尽に逆上されたら堪らない。触らぬ神に祟りなし。冷たいようだけどそっとしておくことにした。

のちに他の人からオオキ君の生活環境を聞いて驚いた。何と彼は年金未納、預金ゼロに加えて自身が居住している賃貸アパートの家賃も数か月間滞納しているという。滞納した理由はおそらく彼の性格が関係しているのだろう。神経質で短気な奴だから預金が出来ないのだ。

家賃が幾らかは知らないが施設警備員の給料では滞納分を返すのは容易ではない。オオキ君は転職しない限り事実上経済的に破産しているのだ。

という風に考えてみるとオオキ君は年金を「納めていない」のではなく、「納められない」のではないか。しかし無駄にプライドが高い彼はそれを認めることが出来ず、「年金危機」を言い訳にして、年金は納めなくてもいいと自身を納得させ現実から目を背けているのではないだろうか。

その後、間もなくオオキ君はその警備会社を退職してしまった。連絡先を交換してなかったので、今のところ彼との交流はそれ以来途切れている。

先日、ぶらりと立ち寄った本屋で何気なく本棚を眺めていたら、髙橋洋一さん著書の『「年金問題」は嘘ばかり』が目に留まった。

本を読んでみて僕は年金に対する概念が変わった。

年金というのは、政府が行う社会福祉ではなく、あくまで長生きした場合の保険なのだ。

健康保険は万が一怪我や病気に罹った場合に備えて毎月納めている。治療費が抑えられるわけだ。しかし幸いなことに健康のままで病院の世話にならなかったら、その保険料は掛け捨てになってしまう。

だからといって健康保険の加入を渋る人はあまりいないだろう。みんな万が一に備えるのだ。

要は年金も同じなのだ。年金は万が一(という表現は不謹慎かもしれないが)長生きした場合に備えて納めておくのだ。

そして、おそらくオオキ君が年金未加入の表向きの理由にしていた「今、年金の未納率が4割」 この表現にはカラクリがあり誤解を生む。これは公的年金の全加入対象者ではなく、あくまで自営業者や農業やフリーターや学生が対象の国民年金に限った場合なのだ。しかも著書によるとこの「未納率4割」の数字の中には「免除者」や「学特・猶予者」も含めてしまっており本当の未納者は全体の約3%しかいないという。

さらに著書では、日本の公的年金制度は破綻しない、と断言している。政府が保険数理なるもので厳密な計算をして「保険料」と「給付額」をはじき出しており、破綻しないよう設計されている、とのこと。おおよそ「40年間支払った保険料」と「20年間で受け取る年金額」が同じになるような仕組みらしい。

ではなぜ「年金危機」が世の中にはびこっているのか。髙橋洋一さんによると、それは財務省厚労省の利権拡大や金融機関の利益向上のため、だそうだ。危機を煽って、投資や年金保険などの様々な商品を売りやすくするのだ。

あと本を読んで気が付いたのは厚生年金の保険料は労使折半、ということ。保険料は会社が半分負担してくれるのだ。僕が勤めていた警備会社の社会保険加入が「申告制」だったのは会社側の負担をなるべく減らすためだったのだ。今更ながら気が付いた僕自身の鈍感さとその警備会社のせこさを呪いたい。

そして「年金保険は税金と同じである」ということ。国民年金法に税金と同じ扱いである、と明記されている。だから「払わなくていい」というのは間違いであり「未納」ではなく「滞納」であり「脱税」といってもおかしくないそうだ。

著者は最終章で、公的年金だけでは足りないと思う人は、自分で私的年金に入るか老後のために蓄えをしておくべき、と勧めている。自分の老後は自分で守らなくてはいけないのだ。35歳でこの本に巡り合ったことに幸運を感じている。

そしてこの『「年金問題」は嘘ばかり』を個人的には是非あのオオキ君にお勧めしたい。出来れプレゼントしても良いくらいだ。当時は短気な奴だから何となく深く接触することを避けていたが、今では自らの冷たい態度に若干後ろめたさを感じる。それでは社会保険加入を知る人ぞ知る「申告制」にしていた警備会社と同じではないか。

しかし残念ながら今は オオキ君との交流は途切れている。僕と年金の話をした後、間もなくオオキ君はその短気な性格故に警備会社の幹部と喧嘩をし退職してしまった。オオキ君が幹部から日頃の勤務態度に関して注意されて、無駄にプライドの高い彼は思わず激高して口論して馘を言い渡されたのが顛末らしい。連絡先を交換していなっかたので彼とはそれっきりだ。 4年ほど前のことだ。